◒からだの余白YOHAKU JOURNAL

日本の読者向け · 食物繊維の分類と食品選び

食物繊維は水溶性と不溶性のどちらがよい?「種類」だけで選べない理由

水溶性と不溶性のどちらか一方が全員に最良とは限りません。粘性・発酵性との違い、食品由来の目標量、表示単位と計算、増やす際の体調と相談の目安を整理します。

からだの余白 編集部公開 更新 15 分で読めます

研究・公的資料と、日常での実践例を分けて紹介しています。個別の診断や治療、減量結果を保証するものではありません。

01

種類の名前だけで選ぶ前に

健康に気をつけようと思って食品売り場へ行くと、「水溶性食物繊維」「不溶性食物繊維」という言葉に出会います。「便秘が気になるなら不溶性」「血糖値を意識するなら水溶性」と覚えている人もいるでしょう。しかし、ふだん食べる穀物や野菜、豆などは一種類の食物繊維だけでできているわけではありません。さらに、同じ「水溶性」の名前があっても、食品や成分によって性質は異なります。水溶性なら全部が粘る、同じように発酵する、と理解すると実際の性質から離れてしまいます。[1][2][5]

結論は、どちらか一方が常に優れているのではなく、ふだんの食事全体で食物繊維の供給源を増やし、目的や体調によって個別の注意点を確認することです。分類を知ることは食品表示を理解する助けになりますが、分類だけで体調の改善や病気の予防を予測できるわけではありません。水に溶ける・溶けないという基本から、目標量の読み方、食材の選び方、増やすときの注意まで整理します。

02

そもそも食物繊維は「栄養のない残りかす」ではない

食物繊維は、人の消化酵素で消化されにくく、小腸で十分に分解・吸収されずに大腸へ届く食品成分の総称です。炭水化物という言葉から、糖のように直接エネルギーになるものだけを連想すると分かりにくくなるかもしれません。食物繊維は、食物の体積や消化管を通る時間、腸内細菌による発酵などと関わる成分として研究されています。[1]

食物繊維の働きは一つではありません。便のかさを増す性質、消化管内で水と結びつく性質、腸内細菌に利用される性質などがあり、成分によって程度は違います。特定の食品を食べた人の便通が変わったという経験は有用な情報ですが、食物繊維の種類だけが理由だと断定することはできません。食事の量、水分、活動、服用薬なども同時に変わっているかもしれないからです。

厚生労働省のe-ヘルスネットは、食物繊維の摂取と便通、循環器疾患、糖尿病などの健康指標との関連を紹介しています。ただし、このような研究で報告される関連は、特定の食品を一回食べたら病気を防げるという保証ではありません。食物繊維を多く摂る人は他の生活習慣も異なる可能性があり、研究デザインを確認する必要があります。[1][2]

03

水溶性と不溶性は、何が本当に違うのか

不溶性食物繊維は、水に溶けにくく、便のかさを増やすなどの性質を持つものとして説明されます。穀物の外皮や野菜、豆類などに含まれる成分が代表的です。たとえば主食を精製度の低い穀物へ一部置き換えたとき、口当たりや噛みごたえが変わるのは、食物の構造が変わるためでもあります。けれども「不溶性を摂れば誰でも必ず便通が改善する」とは言えません。症状や量によっては膨満感などが気になる人もいます。[1][2]

水溶性食物繊維には、水に溶けて粘るものと、粘りの少ないものがあります。厚労省の資料では、血糖やコレステロールの変化、腸内環境との関わりが挙げられています。ただし、「水に溶ける」という一語だけで効果を統一できません。水への溶けやすさ、粘り気、腸内細菌による発酵のされやすさは、別々に考える性質です。[1][2][5]

2017年の欧州の食物繊維に関する総説も、水溶性という区分だけでは生理的な作用を十分に予測できないと説明しています。例えば、難消化性オリゴ糖の多くは水溶性で発酵されやすくても、粘性は高くありません。逆に、水に溶けないというだけで、全成分の発酵の程度が同じになるわけでもありません。この総説は各種資料を整理したもので、この記事の読者を対象とした治療試験ではありません。食品企業所属の著者が含まれ、ILSI Europeによる資金支援が記載されている点も踏まえ、ここでは分類の限界を説明する範囲で参照しています。[5]

そのため、特定の食物繊維を一定量使った試験の結果を、名前に水溶性と書かれたすべての商品へ広げることはできません。商品を比べるなら成分の名称と量、何を調べた説明なのかを確かめます。「水溶性だから」という理由だけで、便通や血糖について同じ効果が保証されるわけではありません。[5]

しかも、植物性食品には水溶性・不溶性の両方が含まれることが一般的です。豆類を食べるときに、成分を完璧に分離して一方だけ食べることは通常ありません。玄米や大麦、野菜、果物なども、食品としての食物繊維に加えて、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、エネルギー量などが異なります。目の前の食品を「水溶性か不溶性か」だけで評価すると、本来の食品の価値を見落とします。

仮に、朝は白いパンだけで、昼は麺類、夜は肉と白米だけという日が続いている人がいたとします。ここで「何の食物繊維サプリを買うか」から始めるより、野菜・豆・きのこ・海藻・穀物など、どの食品群が不足しがちかを見直すほうが、食事全体を考えやすいでしょう。この例は架空であり、個人の必要量を診断するものではありません。

04

「目標量」を比べるときの落とし穴

食物繊維は、多ければ多いほど無制限によいというものではありません。公的な目標を使うときは、年齢や性別などの対象と、その数字が何を示すかを確かめます。国内の目標は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づいて厚労省が解説していますが、一般向け解説の大まかな数字だけを全員共通の処方にすることはできません。病気のために食事の指示を受けている場合は、その指示を優先してください。[2][6]

同じ厚労省の解説には、令和6年国民健康・栄養調査の20歳以上の摂取平均が一日18.1gと記されています。これは対象集団の平均で、あなたが今日食べた量でも、日本の全員が18.1gという意味でもありません。自分の量と比べたいなら、実際に食べた食品と量が必要です。目標値から集団平均を引いて、その差を自分の不足量にすることはできません。[2]

WHOは2023年の公表説明で、成人に食品に自然に含まれる食物繊維を一日少なくとも25g摂ることを勧めています。これは、サプリメントを全員に25g追加する指示ではありません。食品由来の食物繊維の量であり、野菜や果物などの食品そのものの重さとも違います。日本とWHOの数値を比べるときも、対象、食品由来かどうか、指針の位置づけをそろえて考える必要があります。[3]

もう一つの落とし穴は、成分表で調べた値が測定方法にも左右されることです。厚労省の説明では、日本食品標準成分表2020年版(八訂)の一部の植物性食品で、それまでより幅広い成分を測定できる方法が使われ、従来の方法で十分に測れなかった難消化性でんぷんなどが含まれるようになりました。古い成分表と新しい成分表の数字が違っても、それだけで食品そのものが栄養豊富に変化したとは言えません。[2]

食事記録を続けるなら、使った成分表や商品の表示単位も一緒に残すと比較しやすくなります。同じ食品名でも、生か加熱後か、水分を含む状態か、食べる部分の重さかを混ぜると、繊維の量の違いと食べ方の違いを区別できません。細かい数字を精密に見せるより、何を何g食べ、どの表示を使って見積もったかが追える記録を作ることが実用的です。これは記事で提案する記録の工夫であり、食事摂取量を正確に測定する検査方法ではありません。

05

「食物繊維を増やす」を買い物に落とすとどうなる?

スーパーで野菜だけを選ぶと、食物繊維の供給源を狭く考えがちです。厚労省は穀類、いも類、豆類、野菜類、きのこ類、果物類、海藻類を供給源として紹介しています。例えば朝食では主食に工夫を加える、昼食では豆や野菜を含む一品を選ぶ、夕食ではきのこや海藻など複数の食材を組み合わせる、といった考え方ができます。どれか一つを大量に食べるより、続けやすさと食事全体のバランスが大切です。[1][2]

ただし、食物繊維の量を増やした食品が、すべての面で優れているとは限りません。加工食品では、食物繊維を加える一方で食塩、糖類、脂質、全体のエネルギー量などが異なる場合もあります。健康的な選択は「食物繊維が多い」という表示だけでは完成しません。どんな目的で選ぶのか、味・価格・保存性・食べる量が自分の生活に合うかも大切です。

「野菜ジュースを飲んだから野菜を十分に食べた」と考える場合にも、製造過程で食品の構造や成分が変わり得ることを考慮しましょう。商品によって食物繊維や炭水化物、エネルギーなどの量は異なります。ジュースを一律に禁止する必要はありませんが、固形の野菜・果物・穀物・豆などの多様な食材と同じものとして置き換えられるかは、表示を確認する必要があります。[3]

一方、「茶色い食品なら必ず食物繊維が多い」とも限りません。色が濃いパンでも精製された小麦を主体にしている場合があります。食品の見た目から食物繊維の量を断定するのではなく、原材料表示や栄養成分表示を読むことが確実です。「食物繊維」は、義務項目とは分けられた推奨表示の成分です。表示がないという事実だけから、含有量がゼロだと結論づけることはできません。消費者庁は、食物繊維を「表示が推奨されている栄養成分」に分類しており、原則義務の5項目とは分けています。食品の内容を知るため、商品に記載されていれば量と基準単位を確認しましょう。[4]

06

食物繊維を増やしたのにお腹が張る場合

健康に役立つと聞いて、急に豆や全粒穀物を大量に食べ始めると、お腹が張ったり、ガスが気になったりする人もいます。腸内細菌による発酵の過程や消化管の状態など、複数の要因が関係し得ます。これを「体に合わない証明」と一律に決めることも、「腸がよくなっているサインだから我慢すべき」と断定することも避けたいところです。本人の症状と食事の変化を合わせて考える必要があります。

日常で食物繊維を増やすときは、少しずつ食品の種類や量を変え、食事全体との相性を観察するほうが調整しやすいでしょう。水分や食事の規則性なども無視できません。ただし、食物繊維は少しずつ増やすようNIDDKが案内しています。必要な水分量は、体格、健康状態、活動、生活する場所などで変わります。食事や水分について医師の指示がある人は、その条件を確かめ、自己判断で一律に増量しないでください。この記事は、個別の病気や術後の食事療法を決める資料ではありません。[6]

便秘に持続する腹痛、ガスが出ない、嘔吐、発熱、意図しない体重減少などが伴う場合は、食物繊維の調整だけで待たず、速やかに医療機関へ相談してください。NIDDKはこうした症状を早い受診の目安に挙げています。国内では、突然の激しい腹痛や持続する激しい腹痛、吐血、血の混じる便や真っ黒い便は、厚労省が救急車を呼ぶ目安として案内しています。これらの場合は119へ連絡し、食品を追加して反応を見ることを優先しないでください。[7][8]

日常の便通の悩みがセルフケアで改善しないときも、食品を増やすことだけを続けず相談する必要があります。薬を使っている場合には、薬の名前と服用状況も伝えます。食物繊維の記事だけで病名を決めたり、処方薬をやめたりすることは避けてください。診療では、食事以外の原因も含めて確認する必要があります。[7]

「水溶性ならお腹に優しい」「不溶性なら便を押し出す」といった短い説明は覚えやすい一方、体質や症状の違いを消してしまいます。腹部の張り方、便の状態、食事の内容、薬の使用などを簡潔に整理し、困りごとが続くなら専門職と相談するほうが確実です。サプリメントや機能性表示食品が、治療薬や診断に代わるわけでもありません。

07

食材を比較するときは、同じ量で比べるところから

たとえば、店頭で「食物繊維が多い」と表示されたシリアルと、いつものご飯を比べたいとします。前者は一食40g、後者は一杯150gという条件なら、100g当たりの量だけを見ていても実際に一度の食事で摂る量とは一致しません。比べるには、まず表示の基準が一食分なのか、100g当たりなのかを確認し、実際に食べる量に換算する必要があります。これは栄養表示全般に共通する読み方です。

架空の例として、食品Aが100g当たり食物繊維6g、食品Bが100g当たり3gだったとします。Aを40g食べれば2.4g、Bを150g食べれば4.5gです。100g当たりではAのほうが多くても、実際に食べる量次第で一食分の摂取量は逆転します。計算は「表示された100g当たりの量×実際のg数÷100」です。いずれも実在商品の測定値ではなく、表示を読むために作った数値例です。

さらに、食品全体を比べるなら食物繊維だけではありません。片方に甘味料や油脂が加えられている場合もあれば、もう片方にはたんぱく質やビタミンが多く含まれる場合もあります。健康によい食品かどうかを一つの栄養成分に代表させず、食事全体の組み合わせや本人の必要性と合わせて考えることが大切です。広告の「食物繊維〇倍」という言葉を見たら、何を基準とした何倍なのかを確認する読み方が役立ちます。

08

食物繊維はカロリーを「帳消し」にするのか

「繊維が脂肪や糖を吸着する」「血糖値の上昇を穏やかにする」といった言葉から、食物繊維を増やせば食べたエネルギーをなかったことにできると想像するかもしれません。しかし、食物繊維が含まれる食品にもエネルギーやその他の栄養成分はあります。食後の生理的反応に影響することと、食べた食品全体の影響を消してしまうことは別です。具体的な体重変化や治療効果を、成分名だけから計算できるわけではありません。[1][3]

長期の健康との関連を調べる研究も、「どの食品をどれだけ、どの期間食べたか」という条件が大切です。食物繊維だけを抽出して摂った人と、穀類・豆・野菜を含む食事の人では、食物繊維以外の要素も変わります。栄養研究の結果を読むときは、一つの成分が役立ちそうかという問いと、食事全体をどう組み立てるかという問いを区別しましょう。

09

数字を読むときは「成分」「食品」「研究結果」の階層を分ける

研究で水溶性食物繊維が血糖や脂質の指標と関連したとしても、その研究が調べたのは特定の成分、量、参加者、期間かもしれません。一般的な野菜料理を食べることと、特定の成分を分離した試験とは条件が違います。何をどれくらい摂った研究なのかを確かめないと、すべての食品に同じ効果があると読み違えます。[1][2]

「研究でリスクが低かった」という言葉も注意が必要です。食事を長期間追跡した観察研究なら、食物繊維が多い人と少ない人の間に関連が見えたとしても、他の生活習慣の違いが含まれる可能性があります。一方、試験で特定の食事や成分を比較した場合でも、短期間の血糖やコレステロールの変化から、長い年月の病気の予防効果を自動的に推論することはできません。研究の結果がどこまで支持するかを区別しましょう。[3]

食品選びの最初の問いは、「私はどちらの食物繊維を取るべきか」だけではありません。日々の主食は何か、豆や野菜はどのくらいの頻度か、食べやすい食品は何か、食事に医療的な制限はないか。こうした条件を踏まえて、穀類・豆・野菜・果物などの供給源を増やすほうが、分類の暗記より役に立ちます。

結局、水溶性と不溶性は働き方を理解するための便利な区分ですが、どちらか一方を選べば健康上の課題がすべて解決するというものではありません。まず食品全体の多様さと量を見直し、公的な摂取目標は対象と目的を確認する。体調に変化がある場合は無理をせず、必要に応じて医療者へ相談する。「種類を当てる」より「自分の食生活を具体的に改善できるか」を中心に考えることが、この疑問への実用的な答えです。

既存の解説では、食物繊維の種類と働きの概略も取り上げています。本稿と合わせて参照できます。[9]

SOURCES & CONTEXT

参考文献・一次資料

  1. 厚生労働省「食物繊維」(辞典、2026年2月16日更新)
  2. 厚生労働省「食物繊維の必要性と健康」(2026年2月16日更新)
  3. WHO「WHO updates guidelines on fats and carbohydrates」(2023年公表説明)
  4. 消費者庁「栄養成分表示について」
  5. Stephenほか「Dietary fibre in Europe: current state of knowledge on definitions, sources, recommendations, intakes and relationships to health」(2017年総説、分類・限界・利益相反の記述)
  6. NIDDK「Eating, Diet, & Nutrition for Constipation」(2018年5月レビュー)
  7. NIDDK「Symptoms & Causes of Constipation」(2018年5月レビュー)
  8. 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」
  9. からだの余白 関連記事「食物繊維の種類と働き」

一次資料へのリンクを掲載し、観察研究・試験・モデル・公的ガイドの違いを本文で説明します。専門家による医学的監修は受けていません。

YOHAKU JOURNAL記事一覧へ
記事一覧へ